あなたならどうする?『少女終末旅行』【レビュ―/感想】
この世の終わり
SF映画や都市伝説などで多く語られる題材の一つとして、世界の終末が挙げられることが多いと思います。
決して現実となってほしくない内容ですが、見てる方としてはついつい魅入ってしまうんですよね。
ただ、自分以外の人類がいなくなってしまった世界を想像すると、とてもじゃないですがまともに生きていけるとは思えません。
本当にそうした世界になった時、人と会うということがいかに大事で、必要な行動なのかということが分かるのでしょう。
結局人間は、インターネットという手段を使って誰かと間接的にでもつながっていないといけない種族なんだと思います。コロナウイルスで世界のつながりが一変した現状で、より人とのつながりを重要視する機会になったと思います。
これはそんな現代が荒廃してしまった世界で生きる終末ファンタジーである。
全てが終わりを迎えた世界でふたりぼっち
放送:2017年10月~12月
話数:12話
製作:WHITE FOX
ジャンル:SFファンタジー
絶望と、なかよく。
繁栄と栄華を極めた人間たちの文明が崩壊してから長い年月が過ぎた。
生き物のほとんどが死に絶え、全てが終わってしまった世界。
残されたのは廃墟となった巨大都市と朽ち果てた機械だけ。
いつ世界は終わってしまったのか、なぜ世界は終わってしまったのか、そんなことを疑問にさえ思わなくなった終わりの世界で、ふたりぼっちになってしまった少女、チトとユーリ。
延々と続く廃墟を愛車のケッテンクラートに乗り、旅を続ける二人。
二人が旅する巨大都市は、気候は寒冷で降雪も多く、古代人が地球からの独立を選択し、水や空気・エネルギーの循環機構を備えた多層構造型の完全環境都市である。
しかし今では、インフラ維持用に作られた装置のほか、多脚戦車や二足歩行兵器のような高度な兵器の残骸が放置され、人間以外の動植物は自然界では絶滅している。
上層に向かって移動を続ける二人は、数少ない生存者と出会っていく。
終末世界の地図を描くことを生きがいにしている、カナザワ。
口調や物腰が穏やかな男性で、チトとユーリが旅をしていて初めて出会った生存者である。
上層に向かう二人と行き先が合致したため、描いた地図を元に燃料の補給地や上層への昇降機の場所を案内してくれた。
いざ、上層へと昇降機が昇っていくと、機械のトラブルによって昇降機が大きく傾いてしまう。その弾みで、生きがいでもあった地図を下層に落としてしまう。
生きる気力もなくし意気消沈するカナザワだったが、食料と持っていたカメラを交換し、二人に励まされて北へと独り向かうことに。
旧空軍基地に住み、過去の記録から一人で飛行機を作っている、イシイ。
夢中になると周りが見えなくなってしまうタイプの女性。
お風呂と食料を分け与える代わりに、自身の飛行機作りを手伝わせた。
今いる都市とは違う都市へと向かうこと、それが彼女の希望だった。
いよいよ完成した飛行機で離陸することに。
自身の、人類の希望を背負って飛行機は空に向かって飛び立つ。
だが、二人の目の前で飛行機はあっけなく分解し、墜落してしまった。
双眼鏡で覗くと、パラシュートで降下して笑っているイシイがいた。
ユーリ「笑ってる」
チト「え、なんで?」
ユーリ「なかよくなったのかも、絶望と」
旅を続ける二人に、不思議な仲間が加わることに。
謎の白い生き物、ヌコ。
銃弾や燃料を食べ、発声器官はないものの、ラジオなどの電波を介して会話することができる。
少なくなっていくばかりの世界で、二人は増やしてみることにした。
三人での旅が始まると、大きな潜水艦が目の前に現れた。
動力もまだあるようで、食料などを探しに探索する。
そこで、カナザワにもらったカメラのデータを見てみることに。
中には、数多くの人、カナザワと一緒に映る女性、笑顔、海、戦争の歴史…
二人が知らない世界がそこにはあった。
その日は潜水艦の中で休むことになった3人。
ちょっと早く目を覚ましたユーリの前に、大きなヌコが現れ、ユーリをさらってしまう。ユーリを取り戻すために、チトは走る。いつもはうるさくてのんきなユーリだが、この世界ではかけがえのない存在であることを改めて感じながら。
潜水艦の外に出ると、そこにはユーリをさらった大きなヌコが。しかもたくさん。
彼らは、潜水艦の中にあった原子爆弾や原子炉を吸収し、無効化しているというのだ。
一つの都市でそのような処理が終わると、また別の都市に向かって飛び立つようだ。
群れで移動するようで、ヌコは二人との別れを惜しみつつ、彼らと去って行った。
またふたりぼっちとなってしまった、チトとユーリ。
荒廃した世界で、終わりゆく地球で、二人で生きるために上へ向かう。
風の吹くまま、ケッテンクラートで雪降る世界を走る。
新しい日常系
アニメのジャンルの中に、「日常系」と言われるものがあります。
特に敵が出てくるわけでもなく、その世界で淡々と生きていくキャラクターにフォーカスをあてたジャンルですが、大体の日常系アニメは学生モノだったりするんですよね。
視聴者と同じ目線で展開されていくので、ほのぼのとした内容が多い中、この「少女終末旅行」は世界設定が、荒廃した人のいない世界なんですよ。
その世界で繰り広げられる日常っていったい何だろうと引き込まれていきます。
世界が荒廃していたら普通の設定だと、どうして世界が滅んだのかとか、敵はいったい何だろうとか、冒険させたくなっちゃうと思うんです。
ですがこの作品は、その世界で生きることをしていくだけの二人を描いた内容です。
作中に生存者が出てきますが、仲間にするわけでもなく、登場したカナザワとイシイはいい意味で絶望となかよくなった二人だと思います。
この絶望を受け入れ、生きていくことを許容することこそが、絶望となかよくという意味につながっていくのかと思いました。
原作の漫画の方では、アニメ版の先の話もあり完結していて、いろいろと考察があるみたいですが、素直にこの世界をみてほしいです。
なんで?どうやって?なんてのは必要ないから描いていないんです。
この世界が未来の人類社会を予言しているのであれば、その時わかるはずです。
待ちましょう、絶望となかよくなるまで。
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