日常が崩れる音がする『東京マグニチュード8.0』【レビュー/感想】
幸せは身近にあるもの
貴方にとって幸せってなんですか?
宗教の勧誘みたいに始まりましたけど(笑)
阿佐ヶ谷姉妹みたいな二人が玄関に立っていないことを祈るばかりです。
というのは置いておいて、自分が幸せに感じることやものって何だろうって考えた時に、何か気に入ったものを買ったときとか、美味しいものを食べたときがあるかと思います。
でも、もう一歩踏み込んで考えると、実家に帰ったときだと最近感じるようになりました。要は、家族ということですね。
疎ましく思ったときもあります。しかし、離れてから気づくものです、本当に大切なものというものは。
テレビの報道で、家庭内で殺してしまうという痛ましい事件を聞くと、何やってんだよって思います。お前の帰る場所を自分で絶ってしまっていることに後から気づいても遅いんだぞ。
ヤバい、実家に帰りたくなってきた。
うすうす感じた頃にはもう遅い
放送:2009年7月~9月
話数:11話
ジャンル:パニック
家族に会いたい、と初めて思った。
ごく普通のとある家庭。
父親と母親、多感な年ごろの反抗期真っ只中の中学1年生、小野沢未来。元気いっぱいの小学3年生の弟、小野沢悠貴。
夏休みに入り、共働きの両親はなかなか遊びに行けずにいた悠貴と、嫌々付き添いとして未来はお台場のロボット展へ向かう。
ロボットにはしゃぐ弟を横目に、ケータイをいじって退屈そうな未来。
とある雑貨店で、母親への誕生日プレゼントを買うことに。
花の髪飾りを手に取ろうとした時、一人の女性と出会う、バイク便の配達で来ていた日下部真理。
髪飾りを譲ってもらい、喜ぶ悠貴と些細なことでイライラしてしまう未来。
「毎日毎日ヤなことばっかり…いっそのことこんな世界壊れちゃえばいいのに。」
そう思った瞬間、大きな地震がお台場を、東京を襲う。
マグニチュード8.0。もともと埋め立て地のお台場は大きな被害を受ける。
トイレに行った悠貴とはぐれてしまい、避難する人達の流れに逆らい探しに行く未来。
いつ建物が崩壊してしまうかわからない状態で、真理と再び出会い、二人で悠貴を探すことに。
トイレについても悠貴はいない。ほかに行きそうな場所に行ってみると、売店で自販機の下敷きになっていた悠貴を無事見つける。
レイボーブリッジを通ることができないことで、船で避難することに。
船着き場は人であふれかえってしまい、パニック状態だったがなんとか対岸に着くことができた3人は、家に帰るために救援物資を調達しながら歩く。
東京タワーの下にある避難所で休んでいると、余震によって東京タワーを支える支柱が壊れ、倒壊してしまう。近くにいた未来と悠貴は何とか回避することができたが、未来を庇った悠貴は瓦礫が頭に当たってしまった。軽傷で済み、再び歩み始めた3人は避難所になっている未来が通っていた中学校へ向かう。
そこには死体安置所が併設してあり、母親をなくした同級生がいた。つい何日前までは日常だった世界が一変してしまったことを痛感した。
倒壊した建物、日に日に増えていく犠牲者。
そこはもういつも知っている世界ではなかった。
それは3人にも同じく襲い掛かる。
突然悠貴が倒れた。
病院へ急いで運び、処置をしてもらう悠貴を放心状態で未来は見ていた。
最悪の結果を想像してしまう。その時、悠貴の声で目覚める。
何事もなかったように悠貴はそこにいた。
その時、真理の家のある三軒茶屋で大規模な火災があったことを知る。
真理の娘と母親の無事を確認するため、家へと向かうが、そこは燃えカスとなった家が。
近くの小学校が避難所兼遺体安置所であったため、確認しようと3人は行きますが、そこには身元不明の遺体が。
悲しみに暮れる真理。未来と悠貴はもう少し探してみようと隣の避難所の幼稚園を探すと、真理の娘にの姿が。
母親も近くの病院に無事いることが分かり安堵する真理を置いて、安心した未来と悠貴は自分たちの家へと帰ることに。
運よく自衛隊のトラックで自宅マンションの地区に降りることができた二人は、同級生と会い、二人の両親が無事だと聞くことができた。
しかし、通っていた小学校に着くなり、悠貴の姿が見えなくなってしまった。
悠貴の友達と一緒に探してまわるが、姿が見えたと思ったら消えてしまう。
その時建物の倒壊に会うが、無事に逃れることができた。
と同時に悠貴から真実を告げらた。
「ごめんね、ボク死んじゃったんだ。」
本当は未来もわかっていた。
突然倒れて病院に運ばれたときに見ていた幻想は本物だと。
医師から告げられたこと、目の前横たわる悠貴の遺体。どれもが現実なんだと。
目を背けていたいた、現実から、悠貴から。
二人は、自宅へ。
そうして未来を無事自宅へ送り届けて、悠貴は消えてしまった。
復興が進む8月の終わり、自宅へ真理が訪ねてきた。
街が復興していくなか、未来はまだ悠貴の死から立ちなおっていなかった。
そこに、真理が現れ、悠貴が背負っていたバッグと落としたと思っていたケータイが手渡された。
そこには母親からのメールとなぜか真理からのメールが。
真理のケータイを借りた悠貴が生前書き残したメールがあった。
最後まで未来のことを姉として想い続けた悠貴の姿がそこにはあった。
そして、二人で選んだ花の髪飾りを母親へ、少し遅れてしまった誕生日プレゼントを贈った。
「お姉ちゃんの弟に生まれてくれて、ありがとう。」
「歩き続けなきゃ、悠貴が見てる。」
地震が起きる前よりも前向きに生きようとしている未来の姿があった。
どんでん返しの号泣
地震が起こった序盤では、独りよがりな未来に少しいらだつことがありました。
超親切な真理や姉想いの悠貴がいるせいで、未来の葛藤やいらだちが良く分かる演出だったと思います。
地震の脅威を伝えつつ、徐々に避難する人達の心の葛藤にフォーカスをあててきた後半から最後までは、怒涛の展開で息つく暇がありません。
悠貴の死因は東京タワーの倒壊時に瓦礫が頭に当たった時。
頭部外傷による脳挫傷と外傷性の脳出血です。倒壊から庇ってから、頭痛や吐き気があったのは、出血により脳を圧迫されたことによるものでした。
初見では熱中症かと思ったんですけで、よくよく調べると結構前から予兆があったみたいです。
未来がみた悠貴が亡くなった描写が現実だったと知った時の衝撃といったら…
あまりにも周りの人達が悠貴を連れていない未来に対して自然な対応をしているので、自分は全く気付かなかったです。
しかし、現実で同様の人と接する時ってきっとこんな感じなのかと思いました。
細かい被害設定
作品における被害設定がかなり作りこまれています。
・発生日時 - 2012年7月21日、15時46分頃
・震源地 - 東京湾北部
・地震の形態 - 海溝型
・震源の深さ - 約25km
・地震の規模 - M8.0
・最大震度 - 震度7(東京湾北部周辺)
・死亡者数 - 推定18万人(2012年7月23日時点)
・行方不明者 - 15万人(同上)
・重軽傷者 - 20万人以上(同上)
・帰宅困難者 - 推定約650万人
実際の首都直下地震の被害予測は内閣府の平成25年度の報告によると。
1.地震の揺れによる被害
(1)揺れによる全壊家屋:約175000棟 建物倒壊による死者:最大 約11000人
(2)揺れによる建物被害に伴う要救助者:最大 約72000人
2.市街地火災の多発と延焼
(1)焼失: 最大 約412000棟、建物倒壊等と合わせ最大 約610000棟
(2)死者: 最大 約 16000人、建物倒壊等と合わせ最大 約 23000人
数字に差異はあるものの、ここまで現実に近づけた設定は見る人をよりひきつける要因になるでしょう。
リアルとフィクションがうまく描かれた本作は、地震大国である日本においてみてもらいたい作品です。
決してハッピーエンドではありません。
しかし見終わった時に何か想うことがあれば、それは大切な感情だと思います。
価格:4,950円 |