王道こそ至高『ブレイブ・ストーリー』【レビュー/感想】
不意に見たくなる作品
喜怒哀楽、春夏秋冬。
何にも左右されず見たくなる、そんな作品は誰しもがあると思います。
自分が大学生の頃、学校の視聴覚室みたいなところに学生だと自由に見れるDVDがたくさんありました。最新作こそありませんでしたが、ちょっと古めのレンタルビデオ店ほどの在庫量はあったと思います。
授業の合間やちょっと(かなり)サボった時なんかによく利用していました。
分厚いファイルに作品の一覧が乗ったリストがあり、受付の前でペラペラとめくっていた時に、不意に目には入り借りました。
席に着くと隣の席とは仕切りがあり、よくは見えませんがおそらくワイルドスピードを見ていそうなチャラめの学生が座っていました。
そんな彼を横目にDVDをケースから取り出し、プレイヤーへと入れ、音漏れ確実なボロボロのヘッドホンを付け、一人の少年の冒険を見たのです。
初めてみた小学生の頃の思い出がフラッシュバックし、重い足取りで授業へと向かいました。
子供向けで何が悪い
公開:2006年7月8日
原作:宮部みゆき「ブレイブ・ストーリー」
監督:千明孝一
主題歌:Aqua Timez「決意の朝に」
これは、ボクの勇気のハナシ。
三谷亘、小学5年生、10歳。
友達と仲良く、楽しく過ごすごく普通の少年。
しかしその平穏は突如として崩れてしまう。両親の離婚。
父親が母親と亘を捨て、愛人と共に過ごすと告げたのである。
母親はショックのあまり、家でガスを充満させ自殺未遂まで図ってしまう。
亘は平和な日常、家族を取り戻すため、転校生の芦川美鶴から聞いた「幻界(ヴィジョン)」へと行くことを決意する。
「幻界(ヴィジョン)」とは、現世とは異なる幻想空間で、そこにある「運命の塔」にいる女神が現世から来た旅人の願いをなんでも一つ叶えてくれるという。
ヴィジョンへとつながる廃ビルに向かい、大きな扉を潜り抜けたには現世とは全く異なった世界が広がっていた。
ヴィジョンに着くとラウ導師というおじいさんと出会う。
ラウ導師は亘に見習い勇者としての装備と剣、そして願いを叶えるために必要な5つの宝玉のうちの一つを与え、亘を冒険の旅へと送り出した。
しかし突然放り出された先は、辺り一面何もない砂漠。おまけに大量のモンスターに追われ逃げ惑うハメに。そこに突如現れたのは、トカゲのような容姿の大きな異世界人、キ・キーマである。亘を助け出すことに成功し、二人は街へと向かう。
亘は街に入ると、美鶴のような人影を見つけ、追いかけるが見失ってしまう。
おまけにサーカス団のテントに迷い込み、サーカス団に飼われているドラゴンの子供を拐う誘拐犯に間違えられ、警備隊(ハイランダー)に捕まってしまう。
牢屋に閉じ込められた亘に少女の声が聞こえた。旅路を案内してくれる内容に、亘はその声を信じて牢屋から脱獄しようと試みるものの、女ハイランダーのカッツに捕まってしまう。
亘は、自身の潔白を証明するために、真犯人を捕らえることを約束し、謎の声の指示に従い、亘はキ・キーマと共に寂れた教会にやって来た。
教会の地下では、真の誘拐犯達と亘が誘拐したとサーカス団に嘘をついた猫の少女、ミーナが言い争っていた。
どうやらドラゴンの子供を巡って争っているようだ。そのとき、地下の湖から巨大なモンスターが現れる。
勇者の剣と宝玉の力を駆使して、そのモンスターを退治した亘は別の宝玉を手に入れた。
誘拐犯を新たに見つけ出した功績を認められ、カッツからハイランダーの腕輪を受け取った。
亘、キーマ、ミーナ、そしてドラゴンの子供、ジョゾの一行は宝玉を探す旅に出る。
道中様々な苦難を乗り越えながら宝玉を集め、一行は水路が美しい街に立ち寄った。
しかし、亘は皆んなとはぐれてしまう。そこに現れたのはこの街の教会の司教。
親切にもてなしてくれる教会の人達だが、それは亘を陥れるための演技だった。
司教の弟子に嘘の美鶴の情報を聞かされ、幻覚を見せられた亘の前に現れたのは美鶴だった。
その場を助けてくれた美鶴だったが、嘘の情報通りとはいかないが、悪い行いをしながら宝玉を集めていた。
亘は司教に仲間が捕まっていること知り、助けに向かうが、司教に見つかりピンチとなる。そこにカッツたちハイランダーが助けに現れて、司教を倒し、宝玉を手に入れ、仲間を助けることができた。
その頃、美鶴は帝国と手を結び、王宮の地下にある闇の宝玉を手にしようとしていた。
皇女と親しくなり、情報を聞き、ついに闇の宝玉を手にした美鶴。
しかし、その闇の宝玉は魔界の扉を封印する為にあったため、美鶴が手にしたことでヴィジョンに魔界の魔物が溢れ出てしまった。
ハイランダー達やキーマ達が懸命に魔物と戦うなか、亘は美鶴とヴィジョンを救うため王宮へと向かう。
王宮の地下では美鶴が闇の宝玉を手にしていた。しかし、そこで闇の宝玉を守護する常闇の鏡によって美鶴の過去を知ることになる。
美鶴の母親の不倫が原因で、父親か母親と妹を殺し、父親も自殺し、自分は親戚の家をたらい回しにされたという過去を持ってた。
美鶴の願いは、妹を蘇らせること。そのためには手段を選ばない。
美鶴は闇の宝玉を手にし、運命の塔へと向かった。亘もまた仲間に背中を押され、運命の塔へと向かう。
塔に着くと亘と美鶴は自身と同じ姿、しかし暗い目をした自分と戦うとこになる。
亘は防戦一方のなか、美鶴はとうとう自分の影にトドメを刺してしまう。
美鶴と亘が戦っていたのは自分自身。自分の弱い所、闇の部分であった。亘は自分のその部分を受け入れたが、美鶴は否定してしまったがために、自分自身を傷つけ亘に見守れながら光となって消えてしまう。
そこには亘にとって5つ目の宝玉が残っただけだった。
遂に宝玉を集め終わった亘の前に、可愛らしい人間の少女が現れた。亘がピンチのときに、いつも導いてくれていた声の主だった。
そして少女は囁きます、その願いで女神を滅ぼしヴィジョンを手にしよう、と。
しかし、亘はその誘惑を拒否する。すると、それまで可愛らしい少女の姿だった者が、醜い巨大な蛙へと姿を変えた。
亘は勇者の剣を使い、女神になり損なったその醜い蛙を倒すことができた。
蛙を倒した亘の前に現れたのは、ヴィジョンの女神様。
亘の本来の願いは、家族を取り戻すこと。
しかし、旅や自分との戦いによってその願いは変わっていった。
「この世界と、大切な仲間に未来を」
亘は自分の未来に立ち向かう勇気を手に入れたのだった。
女神様は願いを聞き、崩壊しかけたヴィジョンを再生した。その様子を見たキーマやミーナ、カッツ達は亘が現世に戻ったことを悟った。
現世に戻った亘は、回復した母親と新しい生活を送っていた。しかし、戻った現世では美鶴の存在がなかったことになっていて、誰もその存在を覚えていなかった。
いつものように登校した亘は、一人の転校生の少女と出会う。その少女には兄がいた。
その姿を見た亘は、ハッとして懐かしむように涙を流した。
真っ直ぐなストーリー
願いを叶えるために勇者が冒険する、王道のストーリーですね。
しかし、奇をてらった作品や大人向けを意識しすぎた作品よりもよっぽどいいと思います。考察したり、何度も見たりさせるために伏線をはりまくるの作品は観るのに疲れちゃいますし。
そうゆう意味ではストレスなく観られる作品だと思います。
ただ、主人公たちが抱える問題は決して軽いものではありません。
不倫による両親の離婚、一家心中などとても小学5年生が抱える問題にしては重めです。そして最後はその問題を解決する願いではなく、世界のために使うという何とも誠実な結末を迎えます。自分の問題は自分で立ち向かう強さを手に入れた冒険でした。
作品を支える主題歌
アニメソング好きからすると、やはり注目してしまうのは主題歌です。
Aqua Timezの「決意の朝に」は、小学生の頃に観たあの時の胸にグッとくる感じがいまだに消えないほど印象に残っています。
作品に寄りそうような優しいメロディーと、主人公の心情を映し出したような歌詞。
歌い始めは内向的な内容から始まり、人との出会いによって前向きになっていく構成は、エンドロールで流れた時にはそれまでのストーリーを思い出しながら聴くことができます。
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まとめ
宮部みゆき原作の小説の内容をかいつまんで2時間にまとめたので、原作厨の方にはあまりいい評価はされていませんが、そんなことどうでもいいんです。ほっといていいんです。観たければみればいいんです。
むしろ見やすくてとっつきやすい作品なので、これからアニメ作品を見始めたい人にはおすすめです。
現実に立ち向かう勇気、本当の正義とは何かを問いかける作品は、いつの時代もどの世代にもフィットすると思います。
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