何度目の春ジブリ【レビュー/感想/まとめ】
後味さわやかを求めて
2021年は例年に比べて冬らしい気候となり、春の到来を待ち望んでいる方も多いのではないでしょうか?
個人的には、冬が大好きなのでこのまま寒くても一向に構わないのですが…
春といえば、出会いと別れの季節。
厳しい寒さから段々と温かくなり始め、気分も高揚してくる方もいるでしょう。
そんな季節の移ろいと共に、卒業や入学、退職や入社、といった人の流れが変わるイメージがあります。となると人間誰しも新しい環境にドキドキすると思いますし、不安な気持ちにもなりますよね。
自分は大学から一人暮らしを始めて社会人となった今でも一人暮らしをしています。
初めて一人暮らしをする時は尋常ではないほど緊張したのを覚えています。引っ越しを終え、部屋に一人になった時の孤独感たるや。
これまでいろんなものに依存していたのだと痛感させられました。
春になるという正の感情とは裏腹に、負の感情も入り混じる不思議な数か月を過ごしていました。
そんな時になにを頼りにすればいいのでしょう?
そう、日本には素晴らしい文化があります。アニメです。ジブリです。(強引)
しかし実際に自分は大学生になってからジブリを見直してハマりました。家族でわいわい見るのもいいのですが、じっくり隅々まで一人で見るのも悪くないです。
「ジブリ=夏」のイメージを持たれる方も多いと思いますが、ジブリ作品に一貫してあるのが、後味の良さだと思います。春の訪れを晴れやかな気持ちで迎えたいですよね。
そんなジブリ作品の中でも春にぴったりな作品をご紹介できればと思います。
不安な気持ちをさわやかに。
春におすすめのジブリ作品①
・ゲド戦記
公開:2006年7月29日
原作:アーシュラ・K・ル=グウィン「ゲド戦記」
監督:宮崎吾朗
主題歌:手嶌葵「時の歌」
かつて竜と人はひとつだった。
世界を住み分けた竜と人との間に異変が生じ始めていた。
危機感を抱くエンラッド国の国王は原因の究明と対策を講じようとしていた矢先に、息子であるアレンに短刀で刺されて亡くなってしまう。
もともとは真面目な性格でそんな凶行に走ってしまうようには見えなかったアレンは、世界の暗雲に心を悩ませるうちに精神を病んでしまい、自身の「影」の部分が抜き出てしまったことで、心の均衡を崩して衝動的に国王である父親を刺してしまった。
正気に戻ったアレンは事の重大さに怯え、父親の持つ魔法の剣を持ち出して国を去ってしまう。
その場を逃げ出したアレンは、オオカミの大群に襲われてしまうが、その窮地を救ってくれたハイタカという魔法使いと共に、彼の旅へ同行し、かつて栄華を誇っていた「ホート・タウン」へと向かう。
かつて活気のある栄えた町であったはずのホート・タウンは、精神に異常を来す薬や人身売買、贋物が平気で売られているような荒んだ様子だった。
ハイタカと別行動をとったアレンは、人さらいにあう少女テルーを目撃する。
人さらいを行うウサギと名乗る男とその手下からテルーを救い出したアレンは、その夜一人でいたところにウサギたちが現れ、逆に人さらいにあってしまい奴隷として売られてしまいそうになるが、そこにハイタカが現れてまた救いだしてくれた。
ハイタカとアレンは昔からの知人であるテナーの家へと向かった。
そこで会ったのはアレンが助け出したテルー。しかしテルーはアレンの命を顧みない行動に険悪感を抱き、初めは馴染もうとせずにいた。
しばらく畑仕事や牛の世話をして生活を送っていくなかで、テルーは次第にアレンに心開いていく。
そんなある日、ハイタカが不在の時にウサギがテナーの家に押し入り、テナーを連れ去ってしまう。その場にいたテルーに「この女を返して欲しければ、クモ様の城に来るとように」と告げその場を去ってしまう。ウサギが仕えていたのは、ハイタカが世界の均衡を崩していると疑っている魔法使いクモであった。
かつて同じ師のもと魔法を学んだ間だったが、クモが魔法を悪用したためにハイタカがそれに憤り、改心させるためにとった行動にずっと恨みを持っていたクモは復讐の機会をうかがっていた。
加えて、アレンの影の部分を利用し、クモはアレンも自身の城へと誘導していた。
ハイタカもテナーが連れ去られた事をテルーから聞き、魔法を使いクモの城へと侵入するのだが、クモの罠により魔法を封じられてしまい自分も捕らえられてしまう。
テルーも単身、城へと向かうがその途中でアレンの光と出会い、アレンの真の名、レバンネンという名を知ることになる。この世界では、真の名をさらすことはその者の魂を委ねると同じで、通常偽名を使って生きているのだ。真の名を知るというのは己の魂を預けても信頼におけるという関係であるという証拠でもある。
その光の誘導に従い捕らえられたアレンを見つけ出し、テルーの言葉に心を動かされたアレンは闇から抜け出し、自身を取り戻すことができた。そしてテルーは真の名、テハヌーという名を打ち明け、二人は関係を深くした。
捕らえられたハイタカとテナーの処刑が行われようとしている場に、ハイタカとテルーが現れ、クモの手下を倒していき、父親の魔法の剣でクモの腕を切り落とし追い詰めていく。しかし、クモの攻撃によりテルーが殺されてしまう。
呆然とするアレンに、先ほど殺されたはずのテルーが竜の姿となって蘇ったのだ。竜の一族の末裔である力によってクモを倒し、二人を助け出すことができた。
一国の王子であるアレン。
自身を取り戻したことで、己が犯した罪を償うためにエンラッドに戻ることを決心し、テナーとテルーに別れと告げ、ハイタカと共に旅立っていくのであった。
ジブリであってジブリではない
ジブリ作品を語るうえで「宮崎駿」と「高畑勲」という監督は外すことはできません。二人が残した作品は今もなお人気で、地上波で放送されるたびに高視聴率をたたき出す、ヒットメーカーです。
そんな二大巨頭を有するスタジオジブリは、大きすぎる存在が故に若手の台頭がなく、プロデューサーの鈴木敏夫さんは頭を悩ませていました。そんな中、宮崎駿の息子である「宮崎吾朗」に白羽の矢が立ちました。
映画製作の経験のない監督起用に賛否両論はありましたが、新たな方法論や発想が生まれたことによってジブリに新たな風が吹いたことは確かでした。しかし監督経験が浅いが故に、論者や原作者からは批判を受けてしまうことになってしまいます。
しかしこれは「スタジオジブリ=宮崎駿」というイメージが先行しすぎていることが原因だと思います。
良い主人公が良いことをする、という一貫した作風がこの「ゲド戦記」にはないんです。根暗な人相の悪いアレンが、父親を殺して始まるこの作品は多くの視聴者のイメージから外れてしまいました。原作を改変した内容を上手く伝えることができなかったのかもしれませんが、一作品としては大いにアリだと思います。
批判的なコメントが多い作品ですが、個人的にはジブリらしさもありつつ、新しい感覚を見せてくれた作品だと思います。みんな「ジブリだから」とか「宮崎駿の息子だから」みたいな先入観で観てしまうのでいけないのだと。
ジブリらしい異世界感、象徴的な歌、そして闇の部分もある。そんな反骨精神のある作品を先入観なく観ていただきたいと思います。
春におすすめのジブリ作品②
公開:1989年7月29日
監督:宮崎駿
主題歌:荒井由実「ルージュの伝言」「やさしさに包まれたなら」
おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
魔女の家系に生まれた13歳の少女キキ。
魔女のしきたりに従って、「13歳になったら魔女のいない町に移り住み、魔女としての修行を積む」という旅立ちの日を迎えた。
母親から受け取ったほうきと、猫のジジ、父親にもらったラジオをもち、海の見える街を目指して友達に見送られながら旅立った。
のは良かったものの、そこに突然嵐がやってきて、2人は貨物列車に降り立ち雨宿りをすることに。
貨物列車で一夜を明かしたキキとジジは、目を覚ました。キキが目にしたのは初めて見た「海」と、その先にあった海に浮かぶ大都会・コリコだった。
美しい街並みに心躍らせるキキだったが、人々のキキに対する反応が冷たいことに戸惑っていた。終いにはバスにぶつかりそうになったり、警察官に身元確認を取られる始末。
しかし、ほうきで空を飛ぶ魔女に興味津々のトンボという少年に助けられ、事なきを得たと思ったが、その少年のしつこさにその場を去ってしまう。
その後、行くあてもなく途方に暮れていたキキだったが、一軒のパン屋の前でおかみさん・おソノに出会う。
パン屋のお客さんの忘れ物をほうきで飛んで届けたことで気に入られ、お店の2階で下宿させてもらえるようになった。
おまけに魔女を活かし、「魔女の宅急便」として仕事を始める。
配達の仕事をしていく中で、絵描きのウルスラと出会う。届け物を落としてしまい、そのぬいぐるみを直してくれた女性だ。
少々荒っぽいが、親切にしてくれて、仕事を終えることができた。
そして、孫へのニシンのパイを届けて欲しいと依頼してきた貴婦人。
だが、自宅のオーブンの調子が悪く上手く焼けない。キキは手慣れた手つきで薪のオーブンを用意し、雨が降るなか孫がいるパーティー会場へと届けたのだが、トンボから誘われていた自身が行く予定だったパーティーには間に合わなかった。
体調が戻ったある日、キキはジジとの食事中、ジジと会話を交わすことができなくなってしまったことに気づく。
キキは突然のことに驚くが、キキは「魔法の力」が弱まっていたのだ。
ホウキで飛ぶことも出来なくなってしまい、仕方なく宅急便の仕事は休業せざるを得なかった。
すると、落ち込むキキのもとをウルスラが訪れ、キキはウルスラの小屋に泊まりに行くことに。そこでキキはウルスラの描いた絵に感動し、自信を失っていたキキは『ジタバタするしかない』とアドバイスを受けた。
翌朝、ウルスラを見送ったキキに依頼が入る。
あの貴婦人から、「キキという人に届けて欲しいの、この前とってもお世話になったから、そのお礼なのよ。」と言われ涙を流すキキ。
するとその直後、テレビから飛行船が強風に煽られて飛ばされているニュースが飛び込んでくる。
やがて飛行船を支えていたロープが次々と切り離される中、先端から垂れ下がったロープにトンボが必死でつかまっていた。
その様子を見たキキは家を飛び出し、ホウキではなくデッキブラシを使って飛ぼうと試みた。浮くことに集中し、フラフラと安定しないながらも飛び立つことに成功し、トンボのいる所は向かう。
やがて飛行船は風に流されて時計台にぶつかり、トンボは今にも飛行船から落ちそうだった。キキは必死になってトンボに近づくがなかなか手をつかめず、力を失ったトンボは飛行船から落ちてしまう。
しかし、キキは地面ギリギリのところでトンボの手をつかみ、トンボは無事に救出されて、その様子はテレビで流された。
キキは両親に手紙を書いた。
「お父さん、お母さん、お元気ですか。私もジジもとても元気です。仕事の方もなんとか軌道に乗って、少し自信がついたみたい。落ち込むこともあるけれど、私、この町が好きです」
新たな門出を祝う代表的な作品
冬におすすめのジブリ作品でも書かせていただいたのですが、やはり冬や春というと寂しくもありながら新たな門出に対して不安な気持ちになる、ネガティブな季節だと思っています。
↑ぜひご一読していただけるとありがたいです。
(話を戻して)
ネガティブな気持ちになった時に、そっと背中を押してくれる作品はたくさんあるかと思いますが、この「魔女の宅急便」では社会のイメージを上手く落とし込んでいると感じます。
新たな街の人の視線。今までの常識が通じない。仕事がうまくいかない。など、いたって日常的にありうることが作中でも描かれています。
そんな中でも一生懸命にやり抜くキキの周りには、おソノさんやトンボ、ウルスラなど優しく魅力的な人たちが集まってきます。また、仕事でも精いっぱいやることで、老婦人のようなお得意さんもできます。
環境が変化しうまくいかない、落ち込んでしまう。
そんなときにちょっと背中を押してくれるのがこの「魔女の宅急便」です。
このキャッチコピーにすべてがつまっています。
まとめ
人の気持ちが大きく変化する季節、春。
自分の身の回りが変化していく中で、スタジオジブリの作品たちは変わらず人々の心を支え続けています。
そっと背中を押してくれる「魔女の宅急便」
どちらもこの春、きっとあなたを支えてくれる作品になってくれると信じています。
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