非現実Blog

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愛とは何か?『メイドインアビス-深き魂の黎明-』【レビュ―/感想】

ワクワクする自殺

これほどまで本作を表すのに適した言葉があるだろうか。

相反するように見えてうまく調和された作品こそ「メイドインアビス」なのである。

 

アビス。

それは摩訶不思議な大穴。故に人々は魅了され、翻弄されてきた。

そんな穴に冒険へと駆り立てられた人達がいる、探窟家である。しかしアビスの呪いはそんな探窟家たちに試練を与え続けてきた。

それは主人公たちも例外ではない。潜れば生きて帰れないと知ったうえで深くより深く潜り続ける少年少女の姿に心奪われてしまった。

 

テレビアニメシリーズから総集編2作品を経て、今回の完全新作劇場版に繋がっている。

漫画版を見ている人からすると、待望の劇場版だったのではないだろうか。正直言うと総集編や原作から離れた劇場版はあまり好きではない。前提として原作を知っている場合に限るが、やはり話の筋がそれてしまうと作品に対する目線が散漫としてしまう気がする。なので今回の劇場版はかなり本線と沿って進行していくので、原作ファンやこれから見始める人にとってもスムーズに観れるのではないかと。

 

 物語の途中に過ぎない

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©つくしあきひと竹書房メイドインアビス「深き魂の黎明」製作委員会

メイドインアビス-深き魂の黎明

公開:2020年1月17日

原作:つくしあきひとメイドインアビス

監督:小島正幸

主題歌:MYTH&ROID「Foever lost」

 

絶望と希望

hoshiani.hatenablog.com

 ↑劇場版までのあらすじをまとめた記事になっています。

 

リコレグは深界4層で出会った、成れ果てのナナチと共にさらに深界へと冒険を続けていた。

一行が辿りついたのは深界4層にある不屈の花園。辺り一面白い花が群生していて、およそ地下とは思えない風景が広がっている。

そこで3人が出会ったのは、黎明卿ボンドルドの手下の折手(アンブラハンズ)だった。

そしてその傍らには探窟家たちが倒れていた。近寄ってみると探窟家の体に寄生した虫によって死んでいた。

そう、不屈の花園は人に寄生する虫たちの巣窟であった。その最中に3人とアンブラハンズに一斉に虫たちが襲い掛かってきた。必死に抵抗するリコとレグであったが、アンブラハンズの一人が火炎放射器で辺り一面を焼き払ってくれたおかげで何とかその窮地を脱した3人だったが、そのアンブラハンズが「黎明卿は君たちの到着を心待ちにしている。」と告げたことにより、3人の行動が筒抜けであると思い知らされた。

 

第4層から第5層へと入った3人は、深界5層から6層へと続く前線基地(イドフロント)を通過しなければならない。そこは黎明卿ボンドルドが拠点としている場所でもあった。

警戒しながら進む3人の前に現れたのは、リコと同じくらいの年齢の少女、プルシュカだった。とても明るい出迎えに呆気を取られているところに、アンブラハンズを従えたボンドルドが現れた。

そしてプルシュカはそのボンドルドをパパと言い、3人を快くもてなし始めた。

 

「黎明卿」ボンドルド。

探窟家の憧れで生きる伝説「白笛」の一人で、「新薬の開発」「アビスの進路開拓」そして「上昇負荷の克服手段の発見」など、アビス攻略を推し進めた科学者である。

しかしその研究は前線基地で密かに行われている非人道的な実験の成果であり、実験の最中にその被害者となったのがナナチやミーティーだった。

そしてその研究の中でより非人道的な研究が、「上昇負荷の克服」である。一般的には深層になればなるほど上昇負荷が重くなり、体調の悪化から始まり、遂には人の形を成さなくなり死を迎える。それは白笛でも同様であった。故に、深界6層へ潜ることをラストダイブと言い、それはすなわち死を意味するということだ。

そんな上昇負荷を克服したボンドルドが行っているのが、人間の脳と脊髄と最低限の臓器を取り出し、生きたまま箱に詰めて自分への上昇負荷を肩代わりさせる「カートリッジ」というものだった。

そんなボンドルドを知るナナチはリコとレグに親しく接するボンドルドに警戒しながらも、ここは穏便に済まそうともてなしを受けることにした。

更に第6層へと続く道には白笛が必要であり、リコの持つ母親エルザの白笛では所有者以外の使用では効果が発揮しないことを告げられ、留まざるを得ない状況だった。

 

3人の部屋に案内したプルシュカは、リコたちに外の世界について聞いてきた。プルシュカはずっとアビスで生きていて、夜明けというものがどんなものなのかにとても興味を持っていた。話をしていく中で、プルシュカは次第にリコたちと冒険をしてみたいと思うようになり始めていた。

3人が部屋で寝ていると、リコが目を覚ました。しかし、そこにはレグとナナチの姿がなかった。基地の中を探すリコはある階段を見つける。そこを登り始めるリコは上昇負荷の影響を受けてしまい、傷を負ってしまった。そこにプルシュカが現れ、傷の応急手当を施し、レグとナナチの捜索に向かった。

プルシュカのペットのメイニャが上昇負荷を避ける術を持っていたので、それに従って階段を上り始めた。

 

そのころナナチは研究室でボンドルドと話をしていた。

過去に行った実験のこと、その研究を手伝っていたこと、そしてもう一度研究を手伝うことと引き換えに自らの白笛でリコとレグを6層へと行かせてほしいと。

しかし、その最中にもアンブラハンズに捕えられていたレグは実験の対象となり、苦痛を与えられ、右腕も切り落とされてしまっていた。

そんな状況を知り、ナナチはレグを救い出しリコと合流し、前線基地から脱出した。

基地から去る時に、一緒に来るかとプルシュカに訪ねたが、一連の出来事に負い目を感じその誘いを断ってしまう。だが、「一緒に冒険に行きたい!」という願いは告げることができた。

 

前線基地を離れた3人は追ってくるであろうボンドルドを倒すべく作戦を立てていた。

思った通りに現れたボンドルド一行は、3人の作戦によって次々と倒され、ボンドルド自身もレグとの戦いで息絶えることに。

しかしそこに現れたアンブラハンズが倒れているボンドルドの仮面を引きはがすと、自身の仮面と交換し尻尾の生えたボンドルドとして復活したのだった。

ボンドルド自身は肉体を持っておらず、意識体として存在していた。なので、肉体はあくまで器に過ぎず、器がある限り生き続けることができるといった研究まで完成していた。

3人を後に前線基地へと去っていくボンドルド。

 

ボンドルドの体を調べてみると、特級遺物「ゾアホリック」を使うことで、意識を肉体に植えつけることができると分かった。

リコとレグとナナチは新たに作戦を立て、再び前線基地へと向かった。

レグは密かに電力を供給し回復、リコとナナチは時間稼ぎをする。しかし、レグは膨大な電力を供給しすぎたため意識を失い、暴走してしまった。

リコとナナチはメイニャの案内でとある部屋に向かっていた。そこは「カートリッジ」の加工場。かつてナナチが実験を手伝っていた場所だ。

そこに現れたボンドルドに白笛(ユワワース)の原料を知らされる。

それは人間。使用者に深く関係のある者を原料とするものであった。ボンドルドは自身を原料に白笛を作り出した。その過程で生まれたのがカートリッジである。

衝撃的な時間稼ぎをしたところにレグが登場したが、暴走状態のレグは見境なく目の前の敵を攻撃していく。基地全体を破壊し兼ねない火葬砲を放つ前にナナチの呼びかけによって正気を取り戻したが、広範囲にわたって破壊してしまう。

 

爆発に巻き込まれたかに思えたボンドルドは無傷。

おまけにナナチのような獣化を果たし、カートリッジを使い果たしても耐えてしまうようになった。そして最後に使い切られたカートリッジにメイニャが駆け寄り、箱から溢れ出る体液をメイニャが寂しそうに舐めた。

「本当に素晴らしい冒険でしたね、プルシュカ。」

 

それに怒ったレグとナナチは反撃を試みるが、それを影から聞いていたリコは現実を受け止めきれずにいた。

獣化したボンドルドに追い詰められたレグは至近距離で火葬砲を放つが避けられてしまう。そこに、レグの右腕の火葬砲を使ってリコが放つ。

胴体を貫かれ、戦闘に仕えるアンブラハンズがいなくなった為、動くことができなくなったボンドルド。もうすぐこの肉体がダメになる。

歩み寄るナナチに優しく言葉を告げるボンドルドは、やり方は違えどアビスへの探求心は一緒だったのだ。

ボンドルドもまたアビスに魅了された一人に過ぎなかった。

 

そして、プルシュカの入ったカートリッジを抱きかかえて泣くリコ。

体液が溢れて鼓動が止んだ時、箱から出てきたのは白い石。ユワワース。白笛である。

この短期間でリコとプルシュカはとても深い関係へとなっていたのだ。一緒に冒険へと行きたい、パパと仲直りして欲しい、プルシュカの願いはそんな形となって現れた。

これで深界6層への鍵がそろった、リコとレグとナナチ、そしてプルシュカ。

深界6層へと続く丸い乗り物のようなものに乗り込んだ。それを見つめるのはアンブラハンズと新たな肉体を持ったボンドルド。

 

決して戻れない最後の冒険がこれから始まる。

 

プルシュカによるプルシュカのための作品

本作を語る上で欠かせないのが、ボンドルドの娘、プルシュカでしょう。

実際のところは本当のボンドルドの娘ではなくアンブラハンズの娘ですが、アビスの呪いで精神を壊され、ボンドルドの刷り込みによって自身の娘として認識する様になりました。

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物語中盤で、ボンドルドが上昇負荷によって倒された後にプルシュカが駆け寄るシーンがありますが、付き添いのアンブラハンズがボンドルドの面を引き剥がして自身に着けるとボンドルドに変化します。それまで父親が死んでいるのを目の当たりにして涙していたプルシュカが、「パパ!」と言って抱きつくのは、ボンドルド自身を姿形としてしか認識していないということを表しているように見えます。

この歪んだ愛情は、一見気持ち悪く見えるかもしれませんが、プルシュカにとってはそれが全てだったのでしょう。アビスで生まれ育ち、ボンドルドの愛情を受け続けたことにより、結果としてはカートリッジにされてしまい、ボンドルドの上昇負荷を肩代わりしたことでボンドルドの獣化を促したという、なんとも言えない結末を迎えてしまいました。

しかしそこにあったのは、「パパとリコ達が仲直りして欲しい」「一緒に冒険に行きたい」という強い願いがあったという事。

純粋な願いをアビスが「ユワワースへの変化」として叶えたと推測できますね。

ボンドルドとリコ達が仲直りすることはなかったですが、白笛となったことでリコ達と冒険に行くという願いは叶えらました。

一貫してプルシュカが作品の軸としてとらえられていることで、終盤の戦闘シーンで流れる、生まれてからカートリッジにされるまでをプルシュカ視点で描く回想シーンではとても心打たれます。これはプルシュカが冒険に出るまでの作品と言っても過言ではないと思います。

バイオレンスな描写はあくまで作品の一部に過ぎない

メイドインアビス」というと、探窟家たちを苦しめる生物や環境によってもたらされる残酷な描写に注目されがちです。特に、キャラクター達が少年少女であり、キャラデザ自体が二次元チックさが出ているものなので、より際立って感じるのかもしれません。

しかし物語の内容自体が、「死を背にして未知の冒険へ行く」というもの。

未知ゆえにそこには危険がいつも隣り合わせである、という事をリアルに描くことで、いかにリコ達が相当な覚悟と探求心で冒険しているのかが分かることでしょう。

 

そのバイオレンスさを中和するのが、麗美な背景作画であり、ナナチのキャラクターであり、「マルルクちゃんの日常」であるとここで言っておきたいです。

ナナチ可愛い、マルルクちゃん愛おしい、これに尽きます。

まとめ

今回の劇場版は、ラストダイブへの始まりの物語であり、プルシュカの物語でもありました。作品全体を通してみても大きな盛り上がりを見せる内容となっています。

残酷さと高揚感がうまく調和している本作は、そこまでの過程を見てきた人にとってはとても評価できる作品に仕上がっていると感じるでしょう。

 

また、テレビアニメシリーズ放送、劇場版ときて、いよいよシリーズ続編製作が発表され約1年が経とうとしています。続編はテレビアニメとなるのか、劇場版となるのかまだ分かっていませんが、ファンとしてはテレビアニメとして製作してもらえると嬉しいところです。

作品の内容は原作を見る限りだと、成れ果て村がメインで描かれるでしょう。しかし、原作自体が成れ果て村で停滞してしまっているので、1クールもすれば原作に追いついてしまう可能性があります。ここは焦らず、原作から外れずに進んでいってほしいものです。

 

 

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