これを見なくちゃ夏は終われない『時をかける少女』【レビュー/感想】
細田守の夏
夏と言えばアニメ、といったように夏休みに合わせて長編アニメ作品が公開されるようになりました。
最近のヒット作はよくこの時期だなぁと感じています。
以前に「何度目の夏ジブリ」というタイトルで記事を書いたのですが、やはり夏=ジブリというのは日本人の心に刻まれているようです。
つい最近も金曜ロードショーでトトロが放送されていましたね。
17回目でしたっけ?それでいつも高視聴率っていうもんですから、飽きませんよね。
自分も劇場公開していた風の谷のナウシカを観に行きました。
内容は覚えまくっているんですけど、やっぱり何度見てもいい、そう思わせてくれます。
....話がそれましたね。
そう何度見ても楽しめる作品って実際そんないっぱいないと思うんですよ。
特に季節に左右されて、夏だから冬だからみたいに、旬で選ぶことってないと思うんですけど、細田守作品はそれなんですよ。
その時の一瞬に無性に見たくなる、そんな衝動に駆られる。
Time waits for no one.
公開:2006年7月15日
監督:細田守
主題歌:奥華子「ガーネット」
待ってられない 未来がある
高校二年生の紺野真琴、医学部志望の津田功介、転校生の間宮千昭の三人は遊び仲間としてつるむ仲だった。
ある日、真琴は理科準備室に落ちていたクルミのようなものを転倒した際に割ってしまい、異空間に飛び込むような体験をした。そう、時間を飛び越えて過去に戻る「タイムリープ」という能力を手に入れたのだ。
そんなことを自覚していない真琴は、そんな不思議な体験を二人に話すも信じてもらえず、モヤモヤとしながら自転車で下校するのであったが、坂道を下っている最中にブレーキが故障していることに気が付く。
迫る踏切。必死で止めようとするが、そのまま自転車と真琴は電車が来る踏切に突っ込んでしまう。
その瞬間、理科準備室で起こった不思議な体験をする。
ふと気が付くと、自転車が踏切に入る前の時間に戻っていたのだ。
そんな体験を美術館で働く叔母の芳山和子に相談するのであったが、「それはタイムリープよ、真琴くらいの年頃の女の子にはよくあることよ。」と言われてしまう。
その感覚をまた体験するために、川に向かって全速力でジャンプしたところ、見事にタイムリープできたのであった。
そこから真琴は何度もタイムリープを行い、学校に遅刻はしない、テストもそつなくこなす、カラオケを何時間もするなど、私欲のために使いまくった。
そんな青春を謳歌していたある日、後輩から功介が告白された。
ずっと続くと思っていた関係に変化が訪れていたのだ。それは真琴と千昭も例外ではなかった。
千昭は「真琴...俺と、付き合えば?」
突然の告白に動転してしまった真琴はタイムリープで告白する前に戻ってしまった。
何度も、何度も。
数日後、学校内でいじめのトラブルが起きた。いじめられているのは真琴と同じクラスの高瀬宋次郎。真琴がタイムリープした際に調理実習で起こったことが原因らしい。
場を仲裁しようとした千昭と、その中にいた真琴を見つけ高瀬は逆上し、消火器を放り投げた。そのはずみで、親友の早川友梨に消火器が当たってしまい怪我を負ってしまう。それがきっかけで千昭と友梨は付き合うことになる。
そこで真琴は気が付く、自分の腕に書かれている謎の数字に。
その矢先、功介は後輩からの告白を断っていた。
理由は、真琴の成績が上がってきたからうかうかしていられない、というものだった。
ここでもタイムリープによる歪みが起きていると気が付く。
だが真琴は、功介と後輩が付き合うように何度も限りのあるタイムリープをしてくっつけようと奮闘するのであった。奮闘の甲斐あってか、功介と後輩は見事に付き合うことに。
タイムリープの残り回数が少なくなったが、満足げの真琴に功介からメールが。
「なんか俺告られたみたい。自転車借りるね。」
そう、ブレーキの壊れたあの日踏切で粉々になるはずだった自転車だ。
真琴は必死に走る、走る、走る。
あの踏切の前の坂道に何とか到着したが、どうやら功介達は来ていなかったようだ。
ホッと安心した真琴に千昭から電話が来る。
「お前、タイムリープしてね?」
咄嗟に真琴は最後のタイムリープをしてしまう。時が戻ったその時、功介と後輩が乗った自転車が目の前を通りすぎていく。
必死に止めようとするが、どうすることもできない。自転車は踏切に迫っていく。
「止まれ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれぇぇぇ!」
その時突如、静寂が訪れる。
そこには真琴の自転車を押す千昭が立っていた。
千昭が時を戻して事故をなかったことにしたこと、自分が未来からやってきたこと、どうしても見たい絵があること、そしてタイムリープを過去の人間に知られてはいけないことを真琴に告げる。
千昭のタイムリープはもう残っていない、このままここにいることもできないと言い、千昭は姿を消した。
翌日、千昭は自主退学ということで学校からいなくなってしまった。
千昭の想いに向き合えなかった自分に、真琴は1人屋上で号泣する。
その日の夜、ふと気が付く。自分の腕に01とマーキングされていることに。
千昭が時を戻したおかげで、真琴のタイムリープの回数が戻っていたのだ。
そして、もう一度あの理科準備室に、あの日に時をかける。
真琴は、功介と後輩の仲を取り持ち、自分の自転車を使わないように告げ、千昭に会いに行く。そこには、まだタイムリープ回数を残した千昭がいた。
真琴は、千昭が未来からきていることを知っていると告げた。
そして、千昭が見たがっていた絵を未来に残すことを告げ、彼を見送った。
振り向くと千昭はいなかった。足を止め泣きじゃくる真琴。
そこに戻ってきた千昭が顔を寄せ、「未来で待ってる。」
真琴は、「うん、すぐ行く。走っていく。」
翌日、グラウンドで功介と真琴と後輩たちとキャッチボールをする姿があった。
何も知らない功介は、突然いなくなった千昭にぶつくさ言っているが、真琴は「やりたいことが決まったんだよ。」「実は私もさ、やりたいことが決まったんだ」そう言って、真琴は青々とした青空を見上げたのであった。
原点にして頂点
公開当初は一部の映画館のみでの公開でしたが、口コミで話題となり、動員数を確実に増やしていきました。
元々小さな規模で公開する予定だったため、上映館が増えても元のフィルムが足りない状態になってしまったようで、2007年の4月20日のDVD発売日までもの9か月におよぶロングラン上映となりました。
そしてこれが細田守監督の代表作となり、わずかな劇場から世界へと羽ばたくきっかけにもなりました。
何よりこの作品の魅力は、日常にわずかに落とし込まれた非日常だと思います。
がっつりファンタジーではないし、かといって人間ドラマだけでない。
このバランスが細田守作品の魅力だと感じました。
もし、自分が暮らすこの日常にちょっぴり刺激が加わるとどうなるんだろう、もしかしたら...みたいに感じさせてくれます。
加えて、このキラッキラの青春映画!
羨ましさしかありません。完全に嫉妬しています、キャラクターに(笑)
この作品を支える歌も最高です。
奥華子さんと言えば、デビュー前に路上ライブで有名となりデビューし、本作の「ガーネット」でヒットしたことで一躍知名度を上げました。
主題歌である「ガーネット」も大好きなんですが、挿入歌の「変わらないもの」が個人的にはいいんですよね。
もともとは主題歌になるはずだったのですが、作品の全体のイメージとは合わないが作品の一部のシーンで使用すべきということで挿入歌として採用されたようです。
ちょっぴり切ない感じなんですけど、またそれが哀愁があって夏の夕方をイメージさせます。「ガーネット」は青空、「変わらないもの」は夕焼けみたいな勝手なイメージです。
14年経っても色褪せない。
時は戻せない、今を後悔したくないですね。
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