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主人公と音が突き抜ける『BLUE GIANT』【レビュー/感想】

Jazzとは何か

19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカ合衆国南部の都市を中心に発生した音楽ジャンルです。
西洋楽器を用いた高度なヨーロッパ音楽の技術と理論、およびアフリカ系アメリカ人の独特のリズム感覚と民俗音楽とが融合して生まれました。

近年では大人の音楽としての認識が強く、ハードボイルドな男らしさとセクシーな女性像を連想させ、大人らしく洗練された側面を持ちます。

また他の音楽ジャンルにも影響を及ぼし、ジャズ要素を取り入れた楽曲は、「Jazzy(ジャジー)」と形容詞的に表現されることがあり、椎名林檎の「丸の内サディスティック」が例として挙げられますね。

 

若者がやり始める音楽と言えば、ロックとか最近だとヒップホップだったりすると思うのですが、なかなかジャズに興味を持つ機会はないと思います。YouTubeとかサブスクのアプリでいくらでも聴けますけど、やってみたいとは正直思ったことがありません。

ただ、間近に目の前で観る聴く機会があったら、その場の雰囲気と胸に響くものによって、興味が涌くかもしれません。

 物語は仙台、広瀬川から始まる

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© 石塚真一小学館

BLUE GIANT

巻数:全10巻

著者:石塚真一

出版社:小学館

あらすじ

宮城県仙台市に住む高校生・宮本大はまっすぐな性格の持ち主だが、将来なにをしたいのか分からず学生生活を送っていた。

そして中学生の頃聞いたジャズの曲に興味をひかれ、初めてのライブハウスでのジャズ演奏を目の当たりにしたことで、サックスプレーヤーを目指すことを決意した。

だが楽器はズブの素人。我流で練習してきたため楽譜は読めずスタンダードナンバーも知らない。

加えて肝心のサックスすら持っていなかった。サックスを購入する為に、アルバイトをしたのだがなかなかお金が貯まらない。それを見ていた兄の雅之が、サックスを大にプレゼントした。

買ってもらったサックスで、毎日学校帰りに河原で練習していた大は、リードを購入する為に立ち寄った楽器屋の店主からライブの誘いを受ける。

 

飛び入りという形で参加することになったジャズバー「バード」での初ライブ。

今までの練習の成果を発揮しようと、渾身の力を込めた大のパワフル過ぎる演奏は一部の聴衆に強烈な印象を残したものの、静かでムーディーな音楽を聴きに来た一人の常連客に「うるさいんだよ!」と一喝され、ステージを下ろされてしまう。

そんな荒削りな大の演奏に「バード」の店主、川西は講師をつけることを勧めた。元ジャズ奏者の由井の元で大はジャズの基礎を勉強することになる。

 

教室に通うことで大の演奏はパワフルさを増しながらも、繊細な部分も向上していった。サックスプレーヤーになるために高校卒業後は上京することを決意。

そして上京する前に最初のステージにて罵声を放ったジャズバーの常連客を招いて、今の自分の演奏を聴かる。由井のもとでの特訓により周囲の音に合わせる余裕が出来た大はかつてのような独りよがりなプレイを脱却し、常連客はしかめ面をしながらも最後まで演奏を聴いて店を出た。

そして高校卒業後、家族、友だち、そしてジャズを通じて知り合った者たちに別れを告げ、大は東京へ。

 

 

上京後、宛のない大は、進学上京していた同窓生、玉田の家に上がり込み居候を始める。家賃を払うことで玉田もしぶしぶ承諾した。

新居やバイト先を探していた大は、ジャズライブを聴きに入ったバーで演奏していた、沢辺雪祈と出会う。

演奏を聴いた大は、雪祈にバントを組まないかと誘い、後日大の演奏を聴いた雪祈はその誘いに乗った。

 

2人で練習するなかで、ドラムが必要だと感じた大と雪祈は、ドラムを探すことに。

そこに打ち込むことがなく悶々とした大学生活を送っていた玉田が名乗りを上げる。もちろん雪祈は反対するが、大と玉田の熱意と、音楽は上手くても下手でも感動できるものである、という大の後押しで、3人は「JASS」を結成する。

 

初ステージこそ上手くいかなかったが、場数を踏む事に洗練されていく演奏。

そして、たまたま彼らのライブに居合わせたプロのミュージシャン、川喜田とのセッションをきっかけに一気に知名度を上げることになる。

 次のステージとして見据えていたのは、日本屈指のジャズクラブである「So Blue」だ。川喜田のツテを使い、「So Blue」の支配人、平にJASSのライブに来てもらうように約束を取り付けた。しかし3人を待っていたのは、ライブ後に言われた「面白くない」であった。

その後、その酷評を糧に演奏の質を高めていき、レコード会社の方との出会いやプロのジャズバンドとのセッションにより、平から欠員したピアニストの代役として雪祈に声をかけた。

見事そのライブを成功させた雪祈の演奏は、会場のみならず、ジャズファンの間で話題になるほどの評価を得た。そしてライブ後、平はJASSへ正式に出演依頼をしたのだ。

10代での「So Blue」出演は快挙であった。

 

しかし、その矢先。路上でガードマンのバイト中だった雪祈に、居眠り運転をしたトラックが突っ込み、重傷を負ってしまう。ピアニストの命である腕も。

雪祈不在ながら、上々の演奏でステージを終えた二人は、ようやく雪祈と再会を果たすが、雪祈から告げたのはJASSの解散であった。

切断こそ免れたものの、回復するかわからない自身の怪我と、大の才能をここで立ち止まらせてはいけないという思いからだった。その提案に玉田も賛成し、葛藤を抱えつつも大はJASSの解散を決断した。

そして大は新たな挑戦を求めて、ヨーロッパへと旅立つ。

新たな音楽作品

今までの音楽を題材とした漫画やアニメでは、ロックや吹奏楽といった身近でよく学校の部活にあるようなジャンルが多い印象があります。

単純に伝わりやすいというのもあると思います。

 

しかしこの「BLUE GIANT」ではジャズが題材となっています。

出てくる楽器こそドラムやサックスといった親しみのあるものでも、音楽自体に馴染みがあるとは言い切れません。むしろニッチなジャンルと言えるでしょう。

ましてや漫画やアニメといった二次創作では、商品自体を手にする年代も自ずと若い人が多いでしょう。そこにジャズをぶち込んできたのは、かなり勝負だったと思います。

 

ですが、実際に読み始めると、ジャズを知らない人でもかなり楽しめる内容になっています。専門用語ばっかりという訳ではなく、主人公の葛藤や愚直さといった人間にフォーカスされた内容になっています。

もちろん演奏シーンは圧巻です。主人公の大のパワフルさや雪祈の繊細さ、玉田の勢いはまさしく音が出てくるといった表現がぴったりです。

アニメ化(映像化)はしてほしくない

 これは賛否両論あると思いますが、個人的には「BLUE GIANT」はこのまま続いてほしいと思っています。

漫画からアニメ化や実写化されたりしてヒットする可能性もあるでしょう。最近だと「鬼滅の刃」ですかね。ジャンプ連載当初に観た時は、なんとなくどこにでもあるような作品だと思っていましたが、アニメ化されたことにより戦闘シーンに磨きがかかり、迫力のある見応えのある作品になりました。

音楽ジャンルで言えば、「のだめカンタービレ」が印象に残っています。むしろドラマの印象の方が強くて、後追いで漫画を見た感じでした。

 

そんな成功例もあるなかで、この作品をアニメ化、実写化してほしくないのは、やはり漫画ならではの表現があるという事です。

大の演奏シーンで、ソロを任されたときにロングトーンで演奏するシーンがあるのですが、そこは文字があってこそ迫力と長さが伝わると思います。音にしてしまうと、どうしても映像の薄さが目立つような気がします。

ページをめくる、というのも漫画の表現方法の一つであると思いますね。

まとめ

現在も連載中で単行本も、この「BLUE GIANT」からヨーロッパ編の「BLUE GIANT SUPREME」、そしてアメリカ編の「BLUE GIANT EXPLORER」とまだまだ続いています。

 

そして単行本の最後にある、おそらく大がプロとして活躍している現在に、過去に出会た人達にインタビューをしているというページがあるのですが、そこが個人的にはツボです。

出てくる人達も魅力的ですが、その人達の成長や現在をみることができるというのは面白い表現だと思います。

 

 

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